今年、浪人を選ぶあなたへ

Twitterが#春から〇〇大学 #卒業 に溢れる時期、受験生活の思い出を噛み締める。
もう受験していたのは3年も前になるけれど、あんなに頑張れたことは後にも先にもない。
受験期に聞いた音楽は今でも心の支えになるし、受験した教室の匂い、寒さ、受験番号を見た瞬間身体が熱くなったこと、全て思い出すことができる。

 

先日、知り合いが2浪をすることを決めた。医学部への道を諦めることができなかったようだが、
歯学部志望にしてもう一年自分を試すことにしたらしい。


受験に成功した立場から、もう受験の経験が遠ざかりつつある立場から、そんなことを言うなと妬まれることを承知で、
今日はあなたにどうしても伝えたいことがある。
これは私の感覚だし、人様にアドバイスをすることなんかできない。
私のほんの少しの経験から言うことなんて、すぐに変わってしまう。でも、私が受験時代に言われたら、少しだけ考えていたかもしれない。

 

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あなたの「医学部に行きたい」気持ちは本当か

あなたの周囲には医学部をめざす子ばかりだった。親が医者だから、今までお世話になってお返しがしたいから、などと言っていたが
本音で言えば、将来安定して高収入が手に入り、出産後も復帰しやすい職業だから、だろうか。
確かにその通り。

しかし、高校まで見てきた世界や、そこで手にした価値観はあまりにも狭い。
私は、「教育格差」なんて単語があることも知らなかった。
CMで流れる商品に、どんな人がどれだけ関わっていて、CMを流せることにどれだけの達成感を得ているのかなんて聞いたことがなかった。
高収入を得ても扱っている仕事の難しさと膨大さに自殺をする人がいるなんて想像もできなかった。
貧乏な暮らしをしていても、毎日が充実している人を知らなかった。

これらのことは、高校までの授業じゃ教えてくれない。
自分にとってどんな生き方をしたいのか、どんな生活が望ましいのか、そもそもどんな職業があるのか、と調べる暇もなく課題に忙殺される。

 

別に大学に行くことが正解なわけでもない。
シェアハウスに住んでいて、初めて高卒の人に会った(←このこと自体がおかしいけれど)。
私が高卒を選ぶものなら、親に泣かれ、見捨てられただろう。私も、高卒になればエッセンシャルワーカーになるしかない、と思い込んでいた。
でも、実際に会ったその人は、楽しそうだった。
自分の人生を、自分の感覚で選んでいる人だった。
何よりも、高卒になったからといって不幸まっしぐらではない。むしろ、工業高校を卒業していれば、すぐに工場に勤務してそこそこの年収を得ることもできるし、高卒も大卒も社会人としてはペーペーだ。
(ただし、高卒という道も厳しいので、それは自己責任で)

 

あなたが本当に大学で医学を学ばなければいけない理由は何か?
親から医学部に行けと言われているからではないか?
周りが医学部に行くからではないか?
医学部以外の道を知っているか?
医学部に行ったとして、どんな医者になって、だれの人生を変えたいか?
目先の収入や安定に惑わされて、「それを選んでおけばまあ正解、成功」という何となく目指しているだけではないのか?
そうして作られた目的に、「人助けが昔から好きで...」「昔からお世話になることが多くて...」「本で読んだ医者に憧れて...」と経験を無理やり引っ張り出して、自分なりに論理をコテコテにつけて納得させているだけではないのか?
医学部の教授から見たら、あなたが医者になる理由はなんだと思うか?
自分が本当になりたい気持ちと、周りからの影響で「なりたいと自分を納得させている」気持ちから出る言葉は教授なら見抜くことができる。

そもそも、医者が安定で高収入になれる保証は、残念ながらもう将来の日本には残されていない。
自分の人生を生きることで精一杯な時代では、自分で人生をデザインしなければ、もういきて行けない。
他人の尺度で生きていたら、だんだん縛られて、そのままミイラになってしまう。それはあなたの人生ではなく、他の誰でもいいことになる。それでもいいなら止めないけれど。

大学の医学部に行くだけが道じゃない。
将来の安定や収入にだけ価値を求めることは、悲しい人生だと私は思う。
自分の人生を自分で行きたいと少しでも願うなら、他人の押し付ける価値観や杓子定規に自分を当てはめることが少しでも窮屈だと思うなら、「行きたい」と思う気持ちが間違っているかもしれない。

 

どうやって「行きたい」気持ちを見つければいいんだろうか?
それは2ページ目で。